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海外転職に向けた円満退職 ~退職届の書き方・出し方も解説~

海外転職におけるハイライトは「志望先からの内定通知」ですが、内定承諾後に待ち受けているのが、現在勤務している会社への退職意思表示から始まる「退職プロセス」です。海外転職に向け、現職を円満退社するためには想像以上に労力がかかります。このコラムでは、退職にまつわる一連の過程を適切に把握、管理するためのノウハウをご紹介します。

目次

職場に退職意思を伝えるその前に…

海外転職の場合、転職先の企業が拠点を置く国で働くことができるビザ(就労ビザ)が確実に保証されるのかどうか、この点を退職の意思表明前に確認しましょう。企業からの内定は、就業ビザの保証を意味するものではありません。

就業ビザ取得に向けての一般的なフロー

必要書類をそろえる

一般的に必要とされる書類の例として、下記などが挙げられます。

パスポート
企業からの内定通知書、もしくは雇用契約書(双方署名済)
CV(職務経歴書)
大学・大学院の卒業・修了証明
無犯罪証明 ※国によっては、日本国内では馴染みのない書類が求められることもあります。
婚姻証明 ※単身ではなく、家族帯同を前提としている場合、家族であることを証明するための必要書類も発生します。また、日本人の場合「婚姻証明」が求められた際には、「戸籍謄本」などの婚姻関係が銘記された書類を公的に英訳して提出するケースが一般的です。

就労ビザ申請手続きに際しては、雇用元となる企業の人事部門が直接手続きをする場合、その企業が外部委託しているビザ代行業者に依頼して手続きをする場合などがあります。内定承諾時に、申請経費は誰が負担するのか?という点も含めて、詳細を確認するようにしましょう。

ビザが下りるまで待つ

意外に見過ごされがちなのが、提出後のアイドリングタイムです。コロナ禍以後、多くの国においてビザ申請から承認までの手続きにかかる時間は、それ以前と比べて長くなる傾向にあります。国によっては正式な申請から認可まで2カ月以上かかるケースもあります。
採用企業側の立場からすると、海外からの採用者に対しては、通常の国内採用時と比べて多大な時間とコストが発生することになります。ビザが無事に認可されたら速やかに入社して欲しいと希望する企業側のニーズは、こうした事情から生じます。
内定者の立場としては、このアイドリングタイムを有効に活用し、退職申し出後の業務引継ぎの段取りやプランの詳細を自分なりにまとめておいたり、日本から海外に生活の場を切り替えるために必要な各種契約・荷物の処理などのための事前リサーチなど、準備を適宜、進めておきましょう。

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職意思表示から退職日までにおさえるべきポイント

ビザが認可されたという連絡を内定先企業から受けたら、即、退職プロセスに入りましょう。海外転職の場合、渡航準備や引越し準備を、通常の引継ぎ業務に加えて実行する必要が生じるので、通常の日本国内転職と比べ多忙感は確実に増します。退職意思の伝達後は、実際の物理的準備に加え、精神的にもバタバタとした時間が過ぎていくので、時間軸を意識したプロセス管理が肝心です。

上級管理職のケースを除き、一般的には「退職予定日の1カ月前」までに、退職意思を会社に伝えるよう就業規則等に定めている企業が多いようです。自分が現在勤めている会社の就業規則、雇用契約について、必ず事前に目を通しておき、通知から退職までの期間を確認しておくようにしましょう。

退職に向けたフロー

では、具体的な行動を含め、退職までのステップを紹介します。

内定先企業の想定入社日・渡航日からプロセスを逆算する

内定先企業が希望している入社日から鑑みて、そのための渡航日はいつまでに設定すべきか、必要な工程を逆算してください。考慮に入れるべきポイントは下記となります。

退職願 > 退職届 > 引継&渡航準備 > 渡航 > (隔離) > 入社

海外転職者の多くは、渡航後に当面ホテル暮らしをしつつ、現地での居住環境や価格情報を吟味しながら住居をじっくり探します。しばらくはホテルから職場に通えるので、入社前の住まい探しは必須工程ではありません。一方、コロナ関連の政策如何によっては、渡航の後に「隔離期間」が一定期間必要となるケースもあるので、こちらについては必要日数の試算に含めるようにしましょう。

「退職予定日の1カ月前」までに、退職意思を会社に伝えるよう就業規則等に定められている場合、退職意向を伝達してからのカウント開始が一般的です。ここでの難関は下記のようなことが挙げられます。

退職の切り出しに躊躇してしまう
なかなか上司に会えない
上司の時間を確保できない

しかし、このような状況が生じると、全工程が後ろ倒しになります。内定先企業からの期待に応えて新天地におけるスタートを気持ちよく切るためにも、「ビザが認可されたら、即、退職を切り出す」という事前認識とそのための準備が必須です。

退職意思の伝達

日本の場合、民法第627条には「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と書かれており、原則2週間前に退職意思を通知すれば、法律上、退職は可能とされています。

とはいえ円満退社を目指すのであれば、業務引継ぎの期間を一定以上確保する必要がありますし、有給消化を取得してから退職日を迎えたいと考える場合は、なおさら、「現職の就業規則が定める期日」を踏まえたうえで、自分が想定する最終勤務日も勘案して申入れを行うのが望ましいです。

退職の意思を伝える相手は?
最初に意向を伝える相手は、直属上司がベストです。しかし直属上司とタイムリーに対話ができない場合には、さらに上の上司や人事部に退職意思を伝えるようにしましょう。
先に述べたように、内定先企業は、ビザ申請から認可されるまでの期間を含め内定者の入社を待ち続けています。不必要に入社日を後ろ倒しする状況が生じないよう、可能な限りスピーディに会社に切り出して下さい。

申し出のタイミングは?
仕事が立て込みがちな慌ただしい時間帯を避け、職場状況が比較的緩やかな時間帯に実施するのが良いでしょう。

退職願/退職届/辞表の提出

まず口頭にて退職意思(退職願)を伝え、その後、会社からの指示を受けて退職届・辞表等の公式書類の提出を行う流れが一般的です。提出書類には、履歴書のような定型フォームはありませんが、下記の2点には留意しましょう。

退職理由:シンプルに「一身上の都合につき」とすることが無難です。
書面上の日付:就業規定に対応するエビデンスにもなるため必ず記載するようにしましょう。実際的には、最終的な退職日(および最終勤務日)について会社との調整を経て決定した後に提出するケースも多いのですが、いずれのタイミングであっても、作成後は速やかに直属上司に提出しましょう。

業務引継ぎ

その後、退職(厳密には最終勤務日)までの期間において、ご自身が受け持っていた業務を後任担当者に引き継いでいきます。
後任候補が社内にいる場合はスムーズに進むことが多いですが、後任者を社外から採用しなければならない場合、その方に直接引き継ぎが行えない可能性も生じます。そういった場合でも問題や抜け漏れが生じないよう、前述のビザ認可待ちの時間を活用して、細かくまとめた資料を事前に作っておくようにしましょう。

退職までに留意すべきポイント

退職最後のその日まで、気を抜かずに下記2点について、留意しましょう。

人間関係の再構築

海外転職を控えている方にとって、前職の上司や会社(人事)との友好関係維持は、中長期的視点から非常に重要な要素となります。特に職場の人間関係に不満を抱いている方へのリマインドですが、後述するリファレンスチェック等の機会に備え、最終勤務日までに上司や人事部門のキーパーソンなどにきちんと感謝の意を添えつつ、長期的な関係を維持したい旨を伝えておきましょう。
仮にそういった方々が後々転職をしても、個人的にやり取りができるアドレス交換をしておくことをお勧めします。
退職する現職の関係者への挨拶は、社会人として当たり前の行為ですが、単なる儀礼ではなく円満退職・将来のキャリアのためには欠かせないステップと心がけましょう。

個人情報の整理・返却

特に営業系職種の方への留意点ですが、会社への返却備品のうち名刺に関しては、ご自身の名刺だけでなく、顧客から受け取った名刺も通常は対象となります。業務上で知り得た機密情報や顧客情報は外部に持ち出すことができないのが原則です。持ち出しが発覚すると、規約違反に問われる場合もありますので注意しましょう。
併せて、仕事で使用していたパソコンのデータ類も整理しておきましょう。どこまでのデータを残すのか、上司に確認したうえで指示を受けるようにしましょう。

退職通知書類について - 退職届サンプル付

退職願/退職届/辞表

現職に対する退職意思の申し出に際して、退職願/退職届/辞表といった書類を直属の上司に手渡す必要があります。退職予定日や提出日以外の箇所については事前に書いておくとスムーズです。
これら三種類の書類は、いずれも会社を辞める際に提出する書類ですが、定義については次の通り。ご自身の状況に合致した書類を作成しましょう。

退職願

「退職願」は、会社との労働契約を解除し、退職することを願い出るための書類です。上司との話し合いの場を設け、口頭で意思表示をした結果、問題なく認めてもらえる場合には、特に書面で提出する必要はありません。
書類として用意すべきケースは、強い引き留め要請が事前に想定されたり、また実際にそうした要請に直面したりした場合です。
円満退社という目的からは少々ずれてしまいますが、退職の意思表示を明確にしたにもかかわらず不合理な引き留めにあったり、後任不在などの理由で退職日の合意を得られなかったりする場合には、書面で提出した退職願(の日付)が、会社に対して退職を願い出た証拠になります。

退職届

「退職届」は通常、退職以降の申し出後に上司から合意を得られ、退職日が決定した後に正式に提出する書類となります。会社によっては規定のフォーマットがありますが、無い場合にはご自身で作成する必要があります。退職届のサンプルと、記載の際のマナーについては下記をご参照ください。ちなみに、こちらは、日系企業にお勤めの場合を想定しています。外資系にお勤めの場合は、英文での提出になることも多いです。

辞表

「辞表」は、会社役員などの被雇用者でない方が役職を辞する際、もしくは公務員が職を辞す際に提出する書類です。「退職届」に類しますが、民間企業の社員など、被雇用者の立場の方は辞表という書式で書類作成をすることはありません。

退職届の書き方

「退職届」はシンプルな定型文での作成が無難です。昨今では、タイプ打ちで作成した書式に署名をする形式も増えていますが、白い便箋に黒のボールペンか万年筆で記載し、郵便番号欄の無い白無地の封筒に入れて提出する手順がマナーといわれています。

本文一行目の一番下に「私事(または私儀)」と書き出します。
海外転職という明確な理由があっても、退職理由については「一身上の都合により」というシンプルな記載がベターです。
上司・会社側と確認した日付を、退職日として記載しましょう。
文末は「退職いたします」といった言い切り形の表現としましょう。
※「退職願」の場合には「退職いたしたく~~~~お願いいたします。」と依頼形での記載となります。
実際に提出する日付も、併せて記載します。
省略をすることなく、ご自身の名前や所属部署を銘記の上、捺印/署名しましょう。
会社の代表者の名前を宛名には記載します。敬称には「殿」の使用が一般的です。
※ 宛名はご自身の名前より上に記載するのがマナーです。
便箋は三つ折りに。
封筒表面には「退職届」、裏面にはご自身の名前と所属部署を記します。封筒を閉じる際は「〆」の字を記載するのが基本です。

サンプルダウンロード

退職時に引き留めにあった場合

海外転職の場合、通常の国内転職と比べて「海外に行く」という転職理由がシンプルで分かりやすいため、強い引き留めに遭う可能性は低いのです。しかし、自分が考えている理想のスケジュール感で進められないケースは、十分に発生し得ます。上司から期待されている方や、社中で重要なポジションに就いている方は特に、海外に行くのは分かったがタイミングを遅らせて欲しいという主旨の引き留めに遭うことが容易に想定されます。
円満退職を目指すうえで、イメージしておくべき引き止めケースとその対応方針について考えてみましょう。

例えば…

仕事に対する責任感という観点から引き留めるケース
後任が決まるまで待ってほしいと引き留めるケース
感情に訴えて引き留めるケース
待遇改善の提案をして引き留めるケース
自社の海外拠点への異動を検討すると提案して引き留めるケース

円満退社を目的とする場合、引き留めを受けた際にはその場で反論をしたりせず、また強硬な意向の主張も敢えて抑えたうえで、一度持ち帰って考えますと伝えつつ、次の話し合いの日時を2‐3日後に設定確約することを原則として心がけましょう。次回のミーティング開催がズルズルと引き延ばされないよう、その場で日時の設定までできるとベストです。念のため懐に忍ばせておいた「退職願」をその際に手渡せると、日程管理上の保険にもなります。

再設定された話し合いの際の対応イメージは、次の通りです。

上述の責任感が問題とされるケース、または後任の任命が問題とされるケース
いずれに対してもしっかりとした引継ぎ計画・詳細資料を提示することで理解を求めましょう。
感情に訴えるケース

再設定が双方のクールダウン効果を生むので、改めて引き留めへの感謝を述べつつ意思に変わりがない旨を伝えるのが良いでしょう。

待遇改善、自社内での海外異動を持ち掛けられたケース

それが本当に魅力的な内容であれば、現実的に保証されるかどうかをしっかりと確認してください。口頭だけで、具体的な実行日の記された書面がもらえない場合には、反古となるリスクも高いと考えましょう。
上司の提案について社内調整に時間がかかり、それに伴って退職日が後ろ倒しになる事があれば、次の企業における心証上の大きなリスクにもなり得ます。ここでも、たとえば「来週月曜までに」などと、明確に確認までの時間を区切ることが肝要です。

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退職意思がぶれそうな時

退職の意思を上司に伝えた後、強い引き留めの反応を受けて「やっぱり退職すべきではないのだろうか…」と悩むケースはよくあります。現在の上司や社内にいる以前の上司などから説得されて、実際に退職を思いとどまる方もいらっしゃいます。

ここで改めて、落ち着いて考えるべきは「なぜ転職しようと思ったのか」という根本理由についてです。今の職場で感じている物足りなさを解消したいからなのか、逆にやり切った感を得たうえで新たなチャレンジをしたいからなのか、転職を考える理由は様々および複合的かと思いますが、最初に「転職したい」と考えた原点がぶれてしまうと、一時的な改善があっても同じ状態が繰り返される結果に至らないとも限りません。

特に海外転職については、内定企業に出会えた事自体、稀少価値が高い機会となります。類似のチャンスが改めて得られる保証もありません。

退職申し出の前に、ぜひ、引き留めを受けた際の自分の感情もシミュレーションしておきましょう。後悔しない転職のためには、時に初志貫徹のための強い意志が求められます。

職場関係者への挨拶

退職理由の根底に会社や同僚に対する不満があっても、円満退職を行うため、そうした不満を決して表現しないようにしましょう。退職した後も前職のキーパーソンとの人間関係を維持することは、将来、海外において次のステップを目指して更に転職をする場合、非常に重要な要素となります。

リファレンスチェック(バックグラウンドチェック)対策

リファレンスチェック(バックグラウンドチェック)とは、内定前後のフェーズにおいて、前職/前前職の上司・人事などの連絡先をご自身から内定企業に伝え、内定企業からその方宛に直接当時の勤務ぶりなどを確認するという手続きのことです。

海外では、前職・前前職の関係者に対して、当時の勤務態度などの確認が実施されるケースは、日本よりも多く発生します。海外の転職市場においては、リファレンスチェックの内容が悪い、もしくは、そもそもリファレンスチェックを行うための関係者を推薦できないなどの理由で、内定に至らないケースは少なからず存在します。仮に現在の上司との関係性が良好でなかったとしても、退職日までの勤務時間を過ごすにあたり、きちんと筋を通しつつ感謝の意を述べられている場合には、そうした機会に、あえて悪いコメントを書く方は稀です。

立つ鳥跡を濁さずの教訓は、思いがけないタイミングで自分自身に戻ってきます。退職時には、上司や職場の関係者に対して、素直にこれまでの感謝を伝えつつ、将来何かあった際には連絡をとらせてくださいと、お願いしておきましょう。

円満退社を目指すには

海外転職に際し、内定受諾後から円満退社に向けて、必要となるプロセス管理や心構え等についてお伝えしてきました。
次のステージへ進むために避けては通れない、しかし多大なエネルギーを要するイベントが退職です。まずは、退職意思を上司に伝える勇気が必要となり、その後、職場における人間関係を崩すことなく状況をコントロールするプロセス管理も必要となります。
「海外で活躍する自分!」というポジティブな未来イメージを強く描き、そのうえで、新たなスタートを切るためのプロセス・時間軸をしっかりと押さえましょう。海外渡航というチャレンジへの覚悟を固めたうえで、落ち着いて一つ一つの手続きを前に進めて行けば、きっと、終わり良ければ総て良し、という心境に至ることができるでしょう。